暗渠

 

 

はやくいなくなりたい。
雄叫びを上げる自尊心と劣等感にずっと苦しめられている。この自我がなくなるならもうなんでもいいから早く消えたい、と思う。
自分より上にいそうな人たちの存在を全部まるごと許せない。違う。許せないのはそこに立てない自分だ。自分よりすごい人を直視できない、素直に賞賛できない、目を細めて顔を背けて逃げるだけだ。
YouTubeも、小説も、まともに享受できなくなったのはいつからだろうか。同い年で芽を出す人の存在を知って、年齢のせいにできない、自分は劣っている、と考え始めてしまったせいだろうか。こんな場所でのうのうとしている自分を見ていられない気がする。
すごい、の基準さえばらばらで、元々憧れていた場所でもないのに、他人がそこに立って光を浴びているのを見ると吐きそうになる。いつまでもこの暗い底でいっしょにいてくれ。
まとわりついてくる影のような劣等がずっと頭の中に語りかけてくる。あったかもしれない世界線のわたし、それに比べて現実はなんて悲惨なものか。水の中では光が当たるものだけがすべてにみえる。屈折したルサンチマンが、下に線を引いて蹴落とそうとしている。この世のものがぜんぶ嫌いだ。はやくここから出してほしい。

山月記を思い出す。今まで読んだ中で一番痛いところをえぐってくる語り口。新井素子さんの星を呼ぶ船シリーズも身にしみるけれど。
尊大な羞恥心と臆病な自尊心。
必死の努力もなく上に登りたがる怠惰な自我と劣等感。

はやく虎になってこの自我から開放されたい。